[02] 待 機

ペット探偵物語 ~僕の76日間迷子猫捜索活動記録~


うちのにゃんこが逃げ込んだ茂みは
広さにしてざっと100坪くらいで、

雑草たちは日差しをたっぷり浴びて、
人の背丈くらいに成長している。

その前に腰掛けて待つこと3日間。

「落ち着いたらすぐに出てくるだろう」という
当初の見込みはものの見事はずれて、

待てども、待てども

・・・・あやつは姿を現さなかった。


[逃亡日] 

昼間~夕方まで待機したあと、
ホームセンター店長さんの許可を得て
夜~明け方まで待機続行。

深夜3時すぎぐらいになると
たまらなく睡魔が襲ってきて、

生まれて初めてアスファルトの上で横になった。

ひんやりとしたアスファルトの肌ざわり。
見上げる満天の星空。

一晩中聞こえていた
ジジーッ、ジジーッという虫の音は

やがて昇ってくる朝の光に
さーっとかき消されてしまった。


[2日目] 

まったく予想外の展開だった。
このままではいつまでたっても埒があかない。

そう判断した僕は、
午前中に手書きの迷子猫チラシを作成し、
ホームセンターでコピーして周囲の住宅地に投函してまわった。

ついでに住民さんに事情を説明して
目立つところ数箇所にポスターを貼らせてもらった。

本業が自営業で、
いわゆるチラシ作成とポスティングは
得意のはずだったが、

真夏の陽射しの中、
ほとんど一睡もしていない身体で、

かつて経験したことのない
アップダウンの激しい地域を
1軒1軒投函するのはさすがに堪えた。

「なんでこんなに起伏がキツいんだよ?」
「おいおい、これって反則じゃないのか?」

ってな感じで、
わからないことを呟きながら
なんとかポスティングを終えると、

いったん帰省先に戻って夕方まで仮眠。

さらにそのあとは
日が沈んでから翌朝まで

ふたたび茂みの前で
虫の音を聞きながら待機。

・・・・そう、ひたすら待機。


[3日目]

お盆休みの最終日。

夕方には自宅に戻って
仕事の準備に取りかからなければならない。

そうなったら僕はもう
あやつを探すことができなくなる。

ここへきて僕は、
本当に焦っていた。

たまらずにホームセンターで
自動草刈機を購入し、

店長の許可を得て
茂みの草を刈ることにした。

「もういいだろ?いいかげん姿を現せよな!」

草刈機の刃が激しい音をたてて
雑草を切り倒していく。

「くそっ、ここもダメか!」

いつまでたっても広い草むらから
ターゲットを見つけ出すことができない。

「ようし、次はあそこだ。」
「いや、きっとあの辺に隠れているはずだ!」

 そして、とうとう迎えたタイムリミット
 
「・・・・・」

そのとき僕は、思わず天を仰ぎ、
6年間一緒に仲良く暮らしてきた愛猫との

・・・・永遠の別れを覚悟した。

鉛のように重たい手足。
汗だらけ泥だらけで目も当てらない顔。

すっかり沈んだ気持ちで
よたよたと帰り支度を始める。

「・・・・」


小一時間ほどで無言の後片付けを終えると、

帰りしな、茂みに向かって、

「今までありがとな。じゃあ、元気で暮らすんだぞ!」
「いいか、どんなことがあっても生き延びるんだぞ!」

と声をかけた。

後ろ髪を引かれる思いというのは、
こういうことを言うのだろう。

もう、家に帰ってもあやつはいない。

もう二度とあやつを抱いて
愛撫してやることができなくなるんだ。

それを思うと、胸がじ~んと熱くなって、

いい歳こいたおっさんが、

本当に、


・・・・泣きたくなった。


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ミラクル銀河伝説

Author:ミラクル銀河伝説
福岡市早良区在住のギター弾きです。人前で演奏するのが好きですが、自分の演奏だけはお客さんが集まらないので、地元の実力派ミュージシャンにご協力戴いてイベントを主催しています。出演希望の方は奮ってご応募ください。/参加費無料(ギャラも無ごめんなさい)
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